マダガスカルでカラヲステル

マダガスカルでのインターンブログ

何もかも捨て去ろう-より少ないことはより豊かなことである-

 

ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエはスペインに世界モダニズム建築三大聖地のひとつ、バルセロナ・パビリオンを建築した。まさにシンプルそのものの作りで、かの有名なサグラダファミリアを建築したガウディと同国・同時期の人物であることに違和感を覚えてしまう。全ての無駄を省いて作り上げた作品と共に彼が残した言葉、それが“Less is More”だ。

「より少ないことはより豊かなことである。」

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以前、スーダンで医療活動を展開するNPO法人ROCINANTESの代表である川原さんにお会いして話をさせて頂く機会があった。スーダンで数多くの命を救い、困難な状況においても決して屈することのないその姿勢をとても尊敬している。情熱的なラガーマンで食事までご一緒させて頂いた。その時彼の言葉を今でも鮮明に覚えている。

“東京には何でもあるけどなんかない”

スーダンには何にもないけどなんかある”

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曹洞宗大本山永平寺に3泊4日で山籠もりをして修行をした。座禅とは宇宙と一体化すること。朝の3時から足を組み、梅干し・沢庵・御粥の食事を取る。私語は厳禁でお経を二時間読む。足を組み始めた瞬間は空腹・眠気・股関節痛、次から次へと邪念が生まれる。しかし、足の痺れが脳を完全に支配した瞬間に、時間にして約10秒度まるで自分がその空間に溶け出した様に・染み込んだ様に全ての感覚が無くなる瞬間が訪れる。逃げようのない痛みが他の邪念そして痛みまでをも消し去った。ひとつの揺るぎないものが、他の要素をそぎ落とす。何でも良い、ただひとつの揺るぎない何かがあるからこそ断捨離が可能なのかもしれないと思った。

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ムルンダヴァに行く道のりは車で12時間。悠然と広がる大地にポツンと車一台が疾走する。人間が限りなくちっぽけに思えるほどの大地に圧倒された。もちろん12時間の道のりの間に街を通り村を通る。その中に本当に小さな集落と呼ぶのすら憚れるほどの家が3、4軒立ち並ぶ場所があった。隣の村までは車で一時間以上かかるような場所に土と藁で作られた家で生活をしている。ものを買うことはおろか、仲間以外の人に会うことすら困難に思えた。必要不可欠なもの以外彼らは所有していない。しかし、彼らの表情は美しかった。

 

3つの言葉そして美しく映えた彼らの表情を見て“所有”という言葉を捉え直してみた。所有する“モノ”は人によって様々であり物質だけに限らない。常識や習慣、考えや情報だって脳が所有する“モノ”だ。

 

所有というのは満足感を伴う行為である。ひとつの所有は更なる所有欲求を生み、満足感が更なる満足欲求を生む。多くのものを持ちすぎると、小さなものを手に入れても満足を感じることが出来なくなってしまう。常にどこか満ちたりず、物足りないような表情を浮かべる

対照的に持ち物を減らすと、所有できたときの喜びは大きい。もしひとつの揺るぎないものを胸に抱けば、断捨離の様に他の欲求は削ぎ落ちる。日々の小さな満足感で心は満たされてにこやかな表情が宿る。彼らの顔に光が宿っていたのは、家族の存在・友人の存在が揺るぎないものになり、僕は見落としてしまう様な幸せ・喜びを知っているからかも知れない。

 

情報多過の時代に生きるからこそ、“モノ”は全て捨て去ってしまえ。モノを持つことは同様にモノに持たれることであることを忘れてはならない。所有は人を縛る。揺るぎない大切なものだけは絶対に捨てることは出来なくて、それだけを唯一の存在として胸に抱けばいい。生まれてくる瞬間は何も持っていないし、眠りにつく瞬間だって何も持つことは無い。何でもある東京は不必要な“モノ”でさえも所有できてしまう。自分をどこまでも身軽にし、小さな感動を味わい尽くして生きる。不必要なものは身に着けない限りなくミニマルなライフスタイルは、小さな幸福を積み重ねることで所有の先にある幸福をも凌駕する。

 

途上国を経験すると多くの人が感じること。

「日本と比べて決して物質的に豊かとは言えないけど、人々の目が輝いていた。」

「日本人は豊かな生活をしているが目の輝きは劣る。本当の豊かさとは何だろうか」

僕はその難問の答えのひとつは所有で説明できるような気がしている。

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“Less is More”より少ないことはより豊かなことなのだから。

 

アタリマエの定義を探しに…